2013/10/02

概算金と相対価格

先日、相対価格と概算金の差について話題になった時、ちょっと気になることがあったというか、なんか誤解している人がいたので・・・。

今年平成25年産新米の状況

24年産が高すぎたのではありますが、今年25年産の概算金は大きく下がりました。

現在の全国の作況は「やや良」と報じられていますが、地元の農家の情報やコメを見ての私個人の感想は「今年の出来は良くない」です。猛暑、日照のためか、どうも全体的に粒が痩せています。今日会った農家も、くず米の発生量が多いこともあり、昨年に比べ反収で1俵ほど少ないようだと話していました。
農家にしてみれば、思わぬ高値に喜んだ昨年から一転、安いうえに出来も悪いと、今年は面白くない年です。さらに追い打ちをかけるように、高すぎて売れ残った24年産がまだまだたっぷりと業者の倉庫に存在し、新米の動きは鈍いときています。

ただ、相対価格は概算金ほどには今のところ下がっていません。私の地元では、相対価格と概算金の差額は4,000円ほどあります。全国的にも4,000円程度の差というケースが多いようです。

ときどき見かける勘違い

ところで先日、両者に結構な差額があるのをみて「JAが儲けすぎだ」と勘違いして憤ってる人がいたのです。この人は、相対価格から概算金を引いた金額がそのままJAの懐に入ると思い込んでいました。

さて、一般にはわかりにくい用語かと思いますので、概算金と相対価格を大雑把に説明してみます。
概算金とは出荷時にJAから生産者へ渡される一時金、前渡金です。JAへの出荷というのは基本的に農家からJAへの販売の委託です。JAから民間業者へ販売されたときに初めて、生産者と買い手の販売が成立するのが本来。価格も民間への販売が成立して初めて確定するものです。ただそれまでには時間も掛かり、生産者の資金繰り等への配慮もあり、JAによる立替金として概算金が支払われています。
相対価格とは全農から民間卸売業者へ販売される価格。この価格が農家の販売価格です。ここからJAでの共同計算のための経費を引いたものが農家の手取りとなります。全ての販売が終了し、最終的な売上金額や経費が確定してやっと最終精算となります。
(ここまで収穫から1~2年かかるわけですが、もうその年の概算金受取やら、肥料代の支払やらと一緒くたにされたものが振り込まれたりで、自分は一体幾らでコメを売ったのか把握してない生産者がかなりいます。まあ、明細を見れば判ることなんですが、それをやらない人が多いのです。)

相対価格と概算金の差額から、共同計算のための経費(加えて、途中で概算金に上乗せで追加払いされた金額があればそれも)を差し引いたものが、最終精算時に生産者へ支払われることになります。
というわけで、相対価格と概算金の差額がまるごとJAの儲けだということはありません。

では、JAが差し引く、共同計算のための経費の内容、金額はどんなものか?
各JAによって施設や交通事情によるコストの差、さらに含まれる内容の微妙な違いもありますが、1俵当たり概ね1,000円~2,000円くらいのようです。

具体例

共同計算経費と精算の具体例を見ます。
これは全農島根県本部の資料です。この例は県全域での共同計算となっていますが、地域によっては単位農協ごとの共同計算もあります。なお、これは全農島根県本部での費用で、単位農協の経費は別にあります。
http://www.sm.zennoh.or.jp/rice/index.htm

この中の「平成23年産米県域共同計算にかかる経費目標額」という資料によれば、合計1,168円となっています。新米の販売を開始するにあたって、23年当時に経費はこれに収める予定ですよ、と生産者に対して説明したものです。
多いのは「流通・保管等に係る経費」で753円、倉庫の経費や運賃です。これは米屋の感覚からして高くはない。運賃1俵300円は、ある程度のボリュームがあるからこそ可能な金額ですね。一般的な農家個人では難しい。
ついで手数料が合計で223円。
「生産・集荷・販売等に係る経費」86円は広告代など。
「需給調整経費」100円は、古米の処理等に備えた予備費みたいなものでしょうか?

そして、23年産米の最終精算の結果がこれです。
「平成23年産米精算結果」
県域での経費の合計は864円と無事に目標額を下回ったようです。
販売代金は14,806円、既に支払われている概算金が11,917円で、このときの差額は2,889円。そこから全農島根県本部の経費864円と単位農協負担の経費507円の合計1,371円を差し引くと1,541円、うち33円は翌年産に繰り越され、残り1,508円となります。
ちなみに、上記の金額は、全銘柄・全等級の平均ですので、具体的な金額は品種や等級、その他の区分によって変わってきますが、概ね差額から引かれるのは1500円くらいということ。全国的にみて中庸な額ではないでしょうか。

再び25年産の話

25年産の相対価格-概算金の差額4,000円の話に再び戻ります。
地域により異なりますが経費は1,000円~2,000円。それを4,000円から引いた残り、3,000円~2,000円の余裕が相対価格には含まれているということです。
JAとしては今の相対価格で完売したいでしょう。最終精算に1俵当たり2~3,000円を追加すれば生産者にいい顔もできる。生産者側からすれば、それだけ上乗せの可能性が残っているわけです。
一方、消費・流通側からすれば、あと2~3,000円は下がる可能性があると解釈できます。JAも今の相対価格を押し通せればラッキーだが、おそらく無理と見ているはず、シーズン途中の値下げを想定しているでしょう。それがこの相対価格と概算金の差額に表れていると考えられます。

まあ、いずれにしてもこの差額がいくら大きかろうが、JAが差し引く金額ってのは別の部分で決まるわけで、今年の状況をみてこの部分でJAが汚く儲けているなどと勝手な思い込みで憤慨するのは、実におかしな話です。

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