2012/03/15

お米の表示について思うこと

ほかの食品同様、お米もJAS法に基づいた品質表示を義務付けられています。

この内容やルールはときどき改正が行われるのですが、それが必要で適切な改正なのか、そもそもこの表示自体が消費者のために十分なものなのか、果たして意味のある必要なものなのか疑問も感じております。
しかし、モノを知らないが声ばかり大きい人の意見が通ってしまい、それに振り回されるのだけは勘弁してほしいと思っています。


「玄米及び精米品質表示基準」

小売されている玄米・精米には一括表示欄がつけられ、原料玄米の産地・品種・産年、精米年月日、内容量、販売者が記載されます。
このうち特に、原料玄米の産地・品種・産年は3点セットと呼ばれ、農産物検査法による検査が表示の根拠になります。
一方、この農産物検査の受検は任意でして、受けない玄米は未検査米として流通することになりますが、玄米・精米の小売段階で上記3点セットの一括表示欄への記載が出来ないほか、パッケージのその他の部分への記載も禁止されています。
しかし、未検査であろうと、どこかの土地で、特定の時期に生産されたものには違いありません。
昨年から米トレサ法との整合性のため、「産地未検査」の文言を併記という条件付で、産地の記載が認められました。


3年前の改正

ところでこの「玄米及び精米品質表示基準」は、3年前の平成21年に改正されました。詳しくはリンクをご覧いただきたいのですが、何が変わったかと言えば、
  • 単一原料の場合(ブレンド米じゃない場合)は「単一原料米」の文言を記載する。また従来は使用割合欄に「100%」と表示していたが、使用割合欄をなくす。
  • ブレンド米の場合、従来は「%」で表わしていた原料の割合を「割」で表示する。
まあ、この意図も理解できんこともないのですが・・・。これ、わざわざ変える必要があったのでしょうか?お客様が受け取る情報に、なんの違いがあるのでしょうか?
前回の改正が平成14年、それから何年も協議をした結果、これですか?
あちらこちらの事情や都合をまとめると、こういう結果にならざるを得なかったのでしょうが・・・。

この効果の分からん改正のために、これまでの一括表示欄が印刷された米袋はそのままでは使えなくなりました。また、単品とブレンドの場合では一括表示欄が異なり、袋の使い回しが出来ず、別々に用意しなければなりません。
米袋ってのはまとめて発注すると単価が安くなるので、5年分とかストックを持ってた同業者もいて、当時ショックを受けていました。


「未検査米の3点セット」および「くず米使用」の表示義務化?

ところで、こんな記事がありました。引用します。
くず米:消費者団体、含有率表示を 格安米1割、業界基準上回る - 毎日jp(毎日新聞) 
毎日新聞 2012年2月29日 東京朝刊
ディスカウントストアなどで売られる格安米に含まれる、砕けた米粒(くず米)の割合を消費者庁が調べたところ、約1割が業界の定める品質の基準値を上回っていたことが分かった。同じ値段なのに含有率が高いコメも低いコメもあり、消費者団体はくず米の含有率の表示の義務化を求めている。
調査の対象は11年11月~12年1月、関東と関西の小売店やネット上で売られていた200点の格安米(主に1キロ300~400円の品)。米穀公正取引推進協議会は精米のガイドラインで、くず米の含有率を8%以下としているが、17点が8・5%以上だった。最も高いものは25%だった。
この商品は1キロ250円だったが、ほぼ同じ値段で含有率が3%の商品もあった。価格と含有率に相関関係がなく、価格が品質を見極める材料にならないことが分かった。
くず米は精米工場で通常の大きさの米とふるい分けられ、みそ用や米菓用などで出荷される。その後の運搬や劣化などによって米が欠け、通常の食用米にくず米が混じることもある。くず米の含有率の表示は法律で義務づけられておらず、多くは「国産100%」や「(銘柄名)100%」などと表示されている。
くず米の問題に詳しい秋田県大潟村農業委員の今野茂樹さんは「故意にくず米を混入させ、米の量を増やしている業者もいる」と指摘する。11年7月にくず米を混ぜた米を新潟産コシヒカリ100%と偽装して販売したとして東京都の男が不正競争防止法違反容疑で逮捕される事件もあった。
主婦連合会の山根香織会長は「食味を損なうくず米の含有率が区別できない状態で売られていることは問題だ」と指摘。NPO法人・日本消費者連盟の山浦康明事務局長は「識別できるような表示を検討すべきだ」と話している。【水戸健一】
また、内閣府消費者委員会は2月20日の食品表示部会で「未検査米の産地・産年・品種表示」と「低品質米(くず米)使用の表示」義務付けに向けて推進していく方針を出したとのことです。



まあ、くず米を意図的に混入したり、あるいは価格や商品の謳い文句に比して砕米の含有率が高かったりするのは問題だと思います。また、JAS表示と矛盾する内容なら、それは論外でしょう。
 しかし、米自体が柔らかく砕米が発生しやすいけど食味は優れた米もあるし、産地の出荷前のふるいによっては1等ついてても粒が揃ってるとは言い難いものもある・・・というのが現場の感想です。また、砕米が多くてもいいから安いのが必要だという人もいます。

できるだけ、相談したり信用できる店で買ったり、量販店で買うなら中身の見える袋を選んで自分の目で確かめ、舌で確認して知識、智恵を付けていくというのが本筋じゃないのかなと思います。
本来、「食育」(僕はこの言葉あんまり好きじゃないんですが)ってこういうセンスを養うことなんじゃないでしょうかね、印刷された表示の読み取り方に長けるのじゃなくて。

また、未検査米の表示の方については、販売者が責任を取れる範囲で、任意で(メリット表示として)記載することを認めてもいいとは思うのですが、これの義務化を主張するのはあまりにも非現実的、想像力に欠けた妄言だと思うのです。
もし、産地を気にするのなら、内容の不明な複数原料米を避け、都道府県名が表示がされた品を選択すれば済むことではないのでしょうか。
義務化のデメリットについては、上記「週刊ライスビジネス」から引用します。
未検査米の中身を表示せよ、と言っても、非常に困難。嘘をつけ、と言っているに等しく、これが実行されれば却って消費者被害が増えるのではないか、と心配される。 
まだ現時点では内閣府のサイトに議事録がアップされてませんので、具体的な議論はわからないのですが、このような誰のためか分からない主張で存在をアピールしなければならない方たちの集まりなのでしょうか。(※その後アップされました。

農産物検査についてや、自分の感覚よりもブランドにたよる消費者の姿勢など、まだ書きたいこともありますが、ちょっと長くなってしまったので、それはまたの機会にします。

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