2012/02/19

お米の研ぎ方が悩ましい件について

「お米の正しい研ぎ方」ってお客様からときどき尋ねられます。皆さん結構関心があるというか、なんか解りにくい部分なのでしょうね。他所の家がどんな研ぎ方してるか見る機会も滅多にないでしょうし。
私の意見としては、結局は炊きあがりが美味しく感じられれば、それで正解ではと。業務用でなく家庭でなら、神経質にならずに大らかにやっていいのじゃないかな、と思ってます。

でも、それじゃあ不安というかスッキリしないのでしょうね。
また、なんでこんな質問がでるのかも、なんとなく解ります。
料理本、雑誌、テレビ、ネットなどいろんな所でお米の研ぎ方が説明されていますが、けっこうバラバラ。真逆の意見が併存してたりします。

その理由を考えてみました。

強くしっかり研ぐのか、優しく洗う程度がいいのか

昔の料理本などでは、手のひらの付け根の部分を使ってゴシゴシ、ギシギシと強くしっかり研ぐよう指導されていたようです。今でも体重をかけるようにして強く、時間をかけて研いでいる年配の方もいます。
しかし近年、やさしく手早く、という研ぎ方が良いとされるようになりました。理由としては「精米技術が進歩したため強く研ぐ必要はなくなった」がよく挙げられていますが、加えて品種の遷移、栽培方法の変化もあるでしょう。現在作付面積1位で4割ほどのシェアをもつコシヒカリも戦後の品種です。続くひとめぼれヒノヒカリもコシヒカリの系統。数十年前にメジャーだった品種と今とでは状況がまるで違います。また栽培時の肥料や収穫後の乾燥の方法も変わってきています。
そのため、昔のような研ぎ方では米が割れて花が咲いたりベチャになってしまう場合がある。で、過剰な米研ぎによる炊飯失敗のクレームを受ける立場の米穀店が、特に積極的に手早く軽い米研ぎをすすめるようになったのではないでしょうか。また、何時まで経っても水が透明にならないと言って、しつこく時間をかけてやっていると胚乳部分のデンプンまで溶け出してしまいます。
ただ、これを極端に解釈してしまう方もいらっしゃるんですよね。水につけてジャバジャバっと、それこそ「すすぐ」っていう程度で終わらせてしまう。これじゃあぼそぼそして艶のないご飯になる可能性があります。ある程度は研いでいただきたいです。
精米は糊化層という膜でコーティングされたような状態といわれています。その膜を研いで剥がすのが米研ぎの目的。刃物を研ぐように、適度な水で、あまり力をかけず、米粒同士が摩擦しあって磨かれるイメージが必要だと思います。

ザルにあげるべきか、あげてはいけないのか

まず、「ザルあげ」といった場合、「ザルにあげた状態で吸水させる」ことと、「ザルにあげて水を切る」の二種類の意味があります。「ザルあげ」について話されるとき、この二つが混同されがちな様です。

まず「ザルあげ吸水」について。
これは、米を研いだあとザルにあげて、その状態でしばらく放置して吸水させる方法です。
今も料理店では「ザルあげ吸水」は普通ですね。ただこれ、家庭で5合くらいを炊飯するのと、お店で3升ぐらい炊飯する場合とでは状況も違ってくると思います。
だいたい、米穀店や米穀店組合が消費者向けに出すメッセージとしては「ザル上げは不要」というものが多いです。それは、おそらくこういう経緯からじゃないかと推測します。

  • 家庭の炊飯で米が乾燥してボロボロになるほどザル上げしたために、ベチャや団子になったりして、それが米穀店へクレームとして入ることが多かった。
  • また夏場などは雑菌が繁殖し腐敗しないように衛生管理が不可欠。
  • 要は炊く人が加減を見極められ、管理が出来れば問題ないが、米穀店としては不特定多数へ向けたメッセージでは安全をとった。

プロが炊飯する場合は、そこらへんの見極めや管理も問題ないでしょうし、3升とかの量になれば、すぐに乾燥することもありません。米粒の外側をベタつかせずに芯まで吸水させるには、この方法が適しているともいわれています。
家庭の少量炊飯でザル上げしながら吸水させる場合はザルをボールの中に入れラップをかけるなど乾燥を防いだり、夏場ならそれを冷蔵庫に入れたりの注意が必要だと思います。

「ザルにあげて水をきる」
米を研いだあとザルでしっかりと水切りするのとしないのとでは、炊きあがりに差がありますね。気のせいかもしれませんが、ザルで水切りしたほうが、さっぱりとして美味しいと感じます。
それと、昔は今の炊飯器の内釜みたいに丁寧な目盛なんてついてませんでした。吸水させたあとの米の容量を基準に加水量を決めたりしてた。その意味でも年配の方にとってはザルあげは当然なんだと思います。
私は家庭では「ザルあげ吸水」は不要だと思いますが、「ザルにあげて水をきる」ことはお勧めします。

結局

米を研ぐってことは、
  1. ホコリや異物などを洗い流す。
  2. 米粒表面の糊化層を研いで落とす。
の2つが目的だと思います。
具体的には、
  1. の洗い流しは、たっぷりの水を使ってさっさと終わらせます。米は最初の水を激しく吸います。この時、糠臭さまで一緒に吸い付かせないように、水は一瞬で捨てます。無洗米でも、この作業はやったほうがいいと言われています。
  2. これが所謂、米研ぎ。米が泳がない程度の水量で、軽く磨いていきます。刃物を研いだり、サンドペーパーをかけるときに水を使いながらやりますが、ここでの水も同じ意味。力を余り加えずに、米粒同士の摩擦で磨くようにします。
まあ、あまり細かいことにとらわれず、上記の2つの目的を果たせて、かつ米を割ったりしない程度なら、それでいいというのが私の考えです。

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